導入事例
データ連携共通基盤ソリューション
戸田市役所 様
課題
効果
東京近郊の工業都市として、また、JR埼京線開通以降は都市部における自然豊かな住宅都市として発展してきた戸田市。全国的に人口減少・少子高齢化が進むなか、戸田市は高い水準の人口増加率を維持し、かつ市民の平均年齢が若く高齢化率が低い「伸びゆく都市」を実現している。さらに、SDGs未来都市として持続可能な「みんな輝く未来共創のまち」を目指すなど、SDGsにも積極的に取り組む。
2021年に戸田市は、「全ての市民がデジタル技術とデータ利活用の恩恵を享受できるとともに、新たな生活様式において安全で安心な暮らしや豊かさを実感できる、デジタル市役所の実現を目指す」と、「戸田市デジタル化宣言」を発表。実際、これまでに共通基盤システムや統合仮想基盤、AI総合案内サービスの導入、スマートフォンで完結する行政手続の導入、さらに災害時に避難所において災害時専用SSID「00000JAPAN」を使用できる事業者に全国初で認定されるなど、さまざまなデジタル化の取り組みを行ってきた。
戸田市のDXの取り組みについて、企画財政部 次長 兼 デジタル戦略室長(CDO) 総務省地域情報化アドバイザー 大山 水帆氏は「我々は『行政手続のデジタル化』『デジタルトランスフォーメーション』『市民とデジタルでつながる市役所』『官民データの利活用』の4つのDX推進ビジョンのもと、『戸田市デジタル化宣言』の実現にまい進しています。すでにすべてのビジョンに着手しており、完了しているもの、ほぼ完了しているもの、引き続き取り組みを進めていくものまで多々ありますが、重要なのはDXで生活のあらゆる面をより良い方向に変化させること。今後もそのために利便性の高い市民サービスの提供と、効率的かつシンプルな行政事務の促進を図り続けていきます」と語る。
行政に関わるサービスのデジタル化を促進するため、政府はクラウド活用を前提とした大規模な共通IT基盤、ガバメントクラウドへの移行を各自治体に要請している。ガバメントクラウドは、高度なセキュリティ対策が施されており、利用者は安心・安全かつ利便性の高いサービスを享受できるとされている。自治体においても、オンプレミスでのシステム運用・保守の負担や費用がなくなり、標準仕様に準拠したシステムを共通基盤で運用できるため、ベンダーロックインから解放され、将来的にコスト削減や業務効率化などの大きなメリットを得られると国では説明している。
しかし、ガバメントクラウドへの移行には、乗り越えなければならない大きな課題がある。それは、住民基本台帳関連業務や税関連業務など標準化対象となった20の業務システムを、2025年度末までに標準化対応し、移行しなければならないことだ。(特定移行支援システムは除く。)そのため、ベンダーロックインによる大幅なコスト増となるなど、本来あるべきガバメントクラウドのメリットが実現できない状況にある。この課題は、積極的にDXに取り組んでいる戸田市も例外ではない。
「ガバメントクラウド移行にともないシステムが共通化・標準化されるのは喜ばしいことですが、標準仕様に準拠させるため、自治体は業務システムのデータフォーマットやレイアウト、文字情報などを改修しなければなりません。これに加え、大手ベンダーから2025年度末までの標準化対応は難しく、長期の延伸が考えられるとのアナウンスがありました。そうなると、20の業務システムはガバメントクラウドに移行したシステムと、庁内のオンプレミスに残るシステムに分かれてしまい、移行過渡期のシステム間連携に課題が生じることになります」(大山氏)
システム連携時に遅延などの問題が生じてしまうと、さまざまな市民サービスはもちろん、職員の業務にも大きな影響が出る可能性がある。
また、過渡期の連携を業務システムベンダーに委託すると本来必要のない追加費用が発生することとなる。そこで戸田市は、過渡期の連携で問題となる標準化未対応の業務システム対策、ガバメントクラウドとオンプレミス間のデータ連携対策として、データ連携共通基盤の構築を決断。そのデータ連携共通基盤の中心となるツールとして導入したのがシーイーシーのWonderWeb LGだった。
自治体であるため、今回のデータ連携ツール導入にあたっては入札が前提となる。その際、戸田市が作成した仕様書のポイントはガバメントクラウドの標準仕様に準拠することだった。「標準仕様である行政事務標準文字の使用を明記したほか、明確に定まっていないものについては、我々が提示したものを使用することを原則としました。この仕様書に沿って構築する場合、マルチベンダー対応は必須となります。そのうえで指名競争入札を実施させていただき、もっとも安価だったシーイーシーのWonderWeb LGを選定しました」とデジタル戦略室 早坂 俊平氏は語る。
WonderWeb LGを擁するデータ連携共通基盤は、2025年2月末に構築を完了し、3月からの運用開始を予定している。これまでのところとくにトラブルはなく、構築は順調に進んでいるという。「仕様書を理解できていないベンダーだと不安が残ります。しかし、今回は導入前にキャッチボールをしており、シーイーシーが自治体のインフラや業務に造詣が深いことは把握済み。WonderWeb LGの統合データベースは、標準化未対応の業務システムのデータもこちらで設計した仕様通り連携してくれます」と大山氏は笑顔で語ってくれた。
ガバメントクラウドへの移行にともない、システム間のデータ連携に苦慮する自治体は相当数にのぼる。こうした状況のなか、データ連携共通基盤の構築を進めている大山氏は「我々が目指しているのは現在の過渡期の連携だけでなく、今後のガバメントクラウドとオンプレミスの連携をスムーズにする仕組みと捉えており、決して一過性のものではありません。将来的にも必要な仕組みですから、多くの自治体に導入されることが望ましいと考えています。シーイーシーには、自治体の環境に合わせてオンプレミスでもガバメントクラウドでも構築可能なWonderWeb LGの横展開を期待しています」と切実に語った。
行政が持つデータの活用・連携を迅速に行い、住民サービスの向上や職員の業務効率化および負担軽減を実現する情報連携基盤「公共サービスメッシュ」についても大山氏は言及する。「公共サービスメッシュを実現するには、ファイル連携だけでは限界があり、API連携も必要になってきます。現在は概念が先行している状況ですから、早々に我々が考える「ローカルサービスメッシュ」(※1)モデルを構築し展開することが必要かもしれません。それが、公共サービスメッシュのベースとなる考え方につながっていけば幸いです」と力強く語った。
(※1)ローカルな環境において基幹系業務のデータをシームレスに連携し、さまざまな業務に活用する仕組み。
荒川を境に東京都と接した埼玉県南東部の市。彩湖・道満グリーンパークや戸田ボートコースなど、あらゆる所に公園と水辺空間があり、街並みは水と緑に溢れている。まちづくりの指針として、市民と行政が共に目指す将来都市像を描き、その実現に向けた明確な目標や方策を定めた「戸田市第5次総合振興計画」が2021年4月1日にスタート。「子どもが健やかに育ち、いきいきと輝けるまち」「創造性や豊かな心を育むまち」「共に生き、支え合い、安心して暮らせるまち」「安全な暮らしを守るまち」「快適に過ごせる生活基盤が整備されたまち」「都市環境と自然環境が調和したまち」「活力にあふれ人が集い心ふれあうまち」を基本目標に掲げ、10年後の将来都市像「『このまちで良かった』みんな輝く 未来共創のまち とだ」を目指している。
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